泣き虫しょったんの奇跡 サラリーマンから将棋のプロへ
![]() |
勇気づけられました |
将棋をあまり知らない人へもぜひお薦め。
瀬川さんが、自身の体験を通して読者に伝えようとしていることは、将棋の世界に限らず多くの人にもあてはまる、夢をかなえるためにはなくてはならない共通しているものだと思います。
奇跡的にプロ棋士になれたのも、彼自身の才能と努力のみならず、彼を支えた多くの人々であったことがよくわかります。熱烈な支援者が多いというのもそんなお人柄であるが故、それもある意味では才能かもしれませんが。
個人的には、兄と慕う先輩棋士と詰将棋をする話がとても印象的です。思い起こせば自分自身もこれに似た形で先輩からそれとなく激励されたり、後輩になんとかやる気を引き起こそうとしたり・・・これってサラリーマンの世界でもよくあることだと思います。でも、極限まで「がんばる」ことって、何も勝負の世界だけではないですよね。とても勇気づけられました。
![]() |
読者を泣き虫にする本 |
これは、本当に感動できる本です。プロ入り試験のときはすごく騒がれたけれど、もしこのような瀬川さんの人生が知られていたら、どのようなヒーローになっていたのか……。「プロ棋士になりたい」という純粋な想いと現実の厳しさ、そして瀬川さんを取り囲む温かい人々に泣かされます。
しかし、中学生のときに日本一になるほど強かったとは……。もし奨励会時代に生活がだらけなければ、早くプロになれていたのでは?
![]() |
いつの時代にもドラマはある |
著者はちょうど私と同世代です。育ってきた時代背景は正に同じ。ですがしてきたことは全く違う。私が普通に(何が普通か分かりませんが)学校に行って、会社に入って、サラリーマンしている間にこんなドラマがすぐ近くで起きていたとは。家の前に将棋のライバルが存在し、才能を引き出してくれる先生と出会い、好きなことをしろという親がいる。そしていろいろな出会いと別れ・・・まさにドラマです。
しかし奨励会とは恐ろしいところだと再度感じました。『将棋の子』を読んだときに感じたあの感覚。それは私が浪人時代に確固たる未来を想像できずに感じていた漠然とした不安。そんな感覚を呼び起こされます。無事プロになって良かった。でも、プロになれなかった無数の人も存在しいろいろな葛藤を抱えている、そんな怖さが併在する世界が奨励会です。
![]() |
この本には奇跡の物語が書いてある。 |
一言で言うと、この本には奇跡の物語が書いてある。
私はこの著者のことを「アンビリーバボー」というテレビ番組で知った。61年ぶりに将棋のアマチュアからプロに編入したという将棋会ではまさに奇跡的なことである。
「この本には僕の恥ずかしいことが書いてありますが皆さんに伝えたいことが書いてあります」とあったが、実際奨励会時代を退会となって自殺を考えたこと、そこから復活して奇跡のプロ編入を果たしたことなどは、私みたいに将棋の知識がなくても共感出来るものがあった。
「あきらめなかれば夢は叶う」と著者は言ったが、それを身を持って教えてくれた本である。いや、正確には「あきらめなければ奇跡を起こすことが出来る」ではないか。個人的には今まで読んだ自伝の中では大平光代さんの「だからあなたも生きぬいて」の次に感銘を受けた本でお勧めの一冊である。
![]() |
プロになる気持ちを捨てなかった瀬川四段 |
試験将棋で念願のプロ棋士となった瀬川四段の自叙伝。奨励会3段リーグで規定年齢内に勝ち上がることができず退会となるも、アマチュア名人として台頭し、将棋連盟にプロ編入試験将棋を制度化させ、その最初の合格者となった経緯が語られていた。奨励会からプロ棋士(4段)になることはものすごく厳しい世界とはきいていたが、奨励会で実際に辛酸を舐めた著者の記述はあまりに赤裸々であり、極限まで追い込まれた心情がストレートに伝わってきた。そこまで苦しんでもプロにはなれず、けれども一層努力してプロになる気持ちを捨てなかった瀬川四段の将棋を愛してやまない姿に心打たれた。一人の人間が夢を掴む、その感動的な生き様をみることができた。

